流星サイダー


毎年毎年、壱星はバレンタインになると
大量のチョコをうちに持ち込んでくる。

『食えないからやる。』

そう言って。



それをパパと弟にあげるあたし。

喜ぶパパを見てると心は痛むけど
チョコなんて作れないし、かと言って買うのはお小遣いがもったいなくて。

……うん、仕方ないよね。



そう言えば
いつだったか、一度だけ壱星に言った事がある。



『チョコ食べれないんです、って言えばいいのに。』

と。


あたしは甘いの大好きだし、むしろ毎日食べたいくらいなんだけど。

でもさすがに、毎年大量にチョコをもらう事に気が引けて。


だって、チョコをくれた相手の中には
もしかしたら、本気で壱星の事が好きな子も居るかもしれない。

そう思うと、何だかやるせなくなる。


あたしなら
ちゃんと食べて欲しい、って思うから。


だけど壱星から返ってきた言葉は
そんな事、これぽっちも考えてない答えだった。



『もらう度にいちいち説明してられるかよ。めんどくせー。』


…あたしは生きてるうちに
何度壱星の『めんどくせー。』を聞くんだろうか。

なんて、意味のない事を考えた記憶がある。





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