流星サイダー
そんな二人は、あたしの存在に気付く事もなく
バレンタイン特有の、甘い空気を教室に撒き散らしていた。
「ねぇ、あたし壱星にチョコ作って来たんだよ!」
「俺、甘いの嫌い。」
「あはは、もーそうゆうとこも好きー!」
壱星は言われ慣れてるのか
琴美ちゃんの言葉に反応する事なく
サイダーのペットボトルの蓋を開けて、ぐびぐびと喉を潤す。
その横顔が、まんざらでもないように
あたしの目には映って。
「壱星、あたしにもちょうだーい。」
「ふざけんな。サイダーは無理。」
「じゃあ何ならくれるのよー!」
じゃれる琴美ちゃんに
少しうっとおしそうに顔を歪めた壱星の瞳が、前触れもなくあたしの居る扉に向けられた。
――視線がぶつかる。
そう思った時には、壱星の目は驚いたように開かれていて
あたしはただ、力のない瞳でその視線を見つめ返した。
ガタン、とイスを鳴らし立ち上がった壱星の唇が
「流璃、」と、あたしの名前を呼ぶ。
カバンを持つ手に力が入って、あたしはようやくさっきの感情の意味に気が付いた。
久々の呼び掛けに、嬉しさよりも勝っていたのは
きっと、怒りにも近い
――嫉 妬。