流星サイダー


そうこう考えているうちにいつの間にか壱星の教室に辿り着いたあたし。



緊張はもう、既に天辺まで差し掛かっていて。

橙色に染まる放課後に
誰かの笑い声が耳を過ぎてゆく。




「…よし、」

意を決し、一度だけ深呼吸をしたあたしは
ひょっこりと扉から顔を覗かせる。





だけど
そこであたしが見たのは

「えー、やだ壱星!可愛いーっ!」

「人の髪の毛で勝手に遊ぶな。」

きゃぴきゃぴと、甲高い声をあげる女の子に
あのボサボサ頭を触らせてる壱星だった。




張り詰めていた緊張が、一瞬にして消えていくのがわかる。


代わりにあたしを襲ったのは
今まで感じた事もない、醜い感情。

その感情を表す言葉を、あたしは知らない。




…あの子、確か…。


ああ、そうだ。
学年一可愛いと言われてる、琴美ちゃんだ。


見た目の派手さとは違い、天然で
それでいて飾らない性格が、男子たちの間では大人気で。

笑うと頬に浮かぶえくぼが、その可愛さをより一層際立てる。





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