お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました

◇◇◇

千花が与えられたのは、アースカラーの優しい色合いをしたファブリックのベッドがひとつだけ置かれた十畳ほどの部屋。ちょうど寝室の真下に位置している。

修矢には寝室の方を使ってもいいと言われたが、千花は頑なに拒否をした。すでに修矢の匂いが付いたベッドでは、きっと安眠できないだろうから。

決して修矢を意識しているわけではない。他人のベッドだと眠れないだろうという、千花の純粋な予想だ。そう自分にも言い聞かせるように念じる。

ゴージャスなバスルームでゆっくりとお風呂につかってきた千花は、ゴロンとベッドに寝転んだ。

修矢が料理に関しては不器用だという意外な一面を知った夕食は、思いがけず楽しかった。おかげで千花は、なんだか気分が弾んでいる。

ふたりで作った明太子パスタは、予定よりたくさんの明太子を使うはめになったが、舌の肥えた修矢にも満足してもらえる出来だった。

いきなり始まった婚前同居に戸惑っていたが、これはこれで悪くないとすら思える。
千花は、白い靄の中にあった結婚が、ほんの少し現実味を帯びてきたような気がしていた。

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