お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました
一樹はしばらく目を瞬かせたあと、「まぁいいや。こんなところに突っ立っていても仕方ないから行こう」と千花の腕を掴んだ。
「えっ、あの、どこに……?」
「いいからおいで。タクシーを捕まえようとしていたんだろ? 俺が送っていくから」
「いえ、そういうわけには」
ちょうどお昼過ぎ。一樹はまだ仕事中だろう。
ところが一樹は千花の言葉にも聞く耳をもたず、ずんずん歩みを進めるばかり。あるビルの中に入ると、エレベーターで地下へ向かった。
「ここ、俺の会社が入ってるビル。下に車を止めてあるから」
「ですが一樹さん、お仕事中ですよね?」
「社長ってのは自由がきくもの。心配する必要はない」
でも、わざわざ送ってもらうのも気が引ける。
「私なら大丈夫ですから」
そう言ってみるものの、まるで逃がさないというように強く掴まれた腕を離してくれる様子はまったくない。
「あの、一樹さん!」