お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました
それは夫の智弘も同じで、おごることなく真摯な態度で医療に従事しているのが短時間で伝わってくるような人柄だった。
「うちの娘もそうなんです。このままだと一生独身なんじゃないかと心配しておりましてね。久城さんからお話をいただかなければ、きっとそうなっていたでしょう」
結婚することが本決まりのような幸助の言い方には異議を申し立てたかったが、そんなことを言える余裕が千花にはない。ただでさえ緊張するお見合いの場なのだから。
その後、修矢との会話はなく、千花は繊細で美しい懐石料理を少しずつ口に運ぶばかり。しかも味はなにもわからない。
会話が盛り上がる二組の両親との間には、透明の壁でも存在しているよう。なにか話そうと思っても、千花の頭の中は真っ白。なにひとつ思い浮かばなかった。
「では、このあとは若いふたりで」
決まり文句で送り出され、修矢とふたりでやって来たのは美しさに定評のあるホテルの中庭だった。
その庭は有名な空間デザイナーによって造られたそうで、和モダンをコンセプトとした緑豊かな景観だ。目にも眩しい芝生、立ち並ぶ木は秋の入口に入ってもまだ青々としている。