お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました

点在する東屋は、和傘を見立てた情緒たっぷりの風情。都会のど真ん中とは思えない空間が、千花の緊張を和らげていく。おかげで足と草履で擦れた部分の痛みを感じるようになるから厄介だ。

少し前を行く修矢のすらっとした背中を追いかけながら歩く千花は、この前のこと――雨の日に起きたアクシデントをふと思い出した。


「あの、久城さん」


千花が声を掛けると、修矢は足を止め振り返った。軽く吹いた風が、修矢の黒髪を揺らす。美しい庭園をバックに立つ姿が妙に様になっていた。


「この前、久城さんが誤字を見つけてくださったので、あのあと残っているチラシを修正できて助かりました。久城さんのおかげです。ありがとうございました」


千花は両手を前で揃えて頭を下げた。


「誤字くらいで大げさだ」
「でも助かったのは事実なので」
「修矢でいい」
「……はい?」


千花が小首を傾げて彼を見る。修矢は片方の手をポケットに入れ、千花からほんの少し視線をずらした。

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