年下御曹司の、甘い提案が聞きたくて。
汚い手口と踏み出す勇気
走り去って行く望美の後ろ姿を俺は呆然としたまま見送るしかなかった。
後を追おうにも事態が把握しきれておらず、体が全く動かなかった__。



(…バイバイって…何だよ…)


信じられない気持ちで考え始め、話していた彼女を思い返す。


望美は必死な感じで喋っていた。
テーブルの上に手を出さず、肩を縮こませたまま困惑しきっていた。


(借金って……本当に?)


疑いながらも幾らなんだ?と思案する。
もうずっと前から返済してても終わらない額なんて、一体幾らくらいの負債を背負ってるんだ。


(それを返済する為に家も売却するとか言ったよな。そして、地方に引っ越すと…)


それは本当か?それとも嘘か?


「嘘……だろ…」


ぼそっと溢れた声にハッとし、慌てて椅子から立ち上がりかけたが__


(望美を追って、俺は何を言うつもりなんだ)


今更追って何が言えると言うんだ。
あいつは俺を自分の手駒として動かそうとして企んでるのに、それをまだ阻止もしてないのに、俺に何が言えるんだ。


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