年下御曹司の、甘い提案が聞きたくて。
せめて声くらいは聞きたかった…と肩を落としながらラインを終える。
まるで長年連れ添った夫婦みたいに、文字だけの会話ってどういうの。


(もっと自分の気持ちを素直にアピールすればいいのかな。…でも、そうしたら反対に距離を置かれそうな気もする…)


この付かず離れずの距離が、輝にはきっと丁度いいんだ。
私の方からグイグイ彼に迫っていっても、きっと呆れられてしまうだけ。


(それに、これまでそんなに迫ったこともないのに、いきなり何?とか思われるのも嫌だし)


だけど、この頃少し焦りもあるんだ。
自分の周りの女子達はさっさと相手を見つけて結婚したり、既に子供を持って母親業に勤しんでる人も多いから。


(私は結婚願望なんてあまり無かったけど、この頃はやっぱり落ち着きたいな…と思う気持ちも何処かにあるのよね)


何より来年は三十歳になる。
三十になったら四十になるのは早いのよ、と職場の先輩から言われてしまったばかりだ___。


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