年下御曹司の、甘い提案が聞きたくて。
私はそれを見て育ったから、卒業後は絶対に大きな企業に就職して、家計を助けてあげようと誓った。

幸いにも採用が決まった銀行では本店勤務を命じられ、通常の新入社員よりも多く給与も賞与も貰える部署に配属された。

あの時、母の言うように学校を辞めなくて良かった…と思い、出来る範囲で家計を助けていくことも可能だった。

そして、勤めている間に懸命に貯金もして、時にはそれを崩して借金の返済にも当てて貰った。



私が銀行に入ってからの三年間は、外でも家でもお金に追われてばかりの毎日だった。

飲み物一つ買うのですら心が痛んで、この些細なお金でもいいから借金返済に回せないものだろうかと苦悩したが………。



……でも、なんでも「石の上にも三年」とはよく言ったもので、借金が着実に減り始めると、父の仕事もようやく増え、公共事業のクジにも当たりだして、この頃は何とか返済する目処が立つようになってきている。


おかげで前ほど生活も切り詰めなくても良くなり、まだまだだけれど、少し安堵はしている。

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