年下御曹司の、甘い提案が聞きたくて。
……だけど、悪い事は雪崩のように降り掛かってきた。

父の造園業は公共事業のクジには悉く外れ、母が勤めていたデパートも売り上げの衰退により、閉店を余儀なくされてしまった。


家計の収入は一気に減り、その上借金までがある。

その返済の為に、父は毎晩遅くまで造園の仕事と他の仕事を掛け持ちしながらお金の工面に回り、母はパートやバイトを重ねて、何とか日々の生活を送るように変わっていった。


当時の私は、短大の一年生だった。
高校からエスカレーター制の女子短に通い、成績優秀だった私は、無利息の奨学金を受け取りながら勉学に励んでいた。


だけど父の借金を知り、自分が呑気に短大なんかへ通っている場合ではないと考えた。

短大をやめて就職しようと相談すると母は、「折角無償で学校に通えているのに絶対にやめては駄目よ」と言い張った。


「望美は英語が好きで、ずっと努力を重ねてきたから今があるのよ。それを簡単に無駄にしては駄目。借金なら何とか返していくから、望美が心配しなくてもいいわ」


そう言って止め、必死になって働き続けた。

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