年下御曹司の、甘い提案が聞きたくて。
エリートな彼と平凡な私
ただいま…と家のドアを開けると、目の前には弟の郁(かおる)が立っていた。
ポカンとした表情で、意外そうに私を見ている。


「どうしたの?今日デートじゃなかった?」


もしかしてフラれた?と縁起でもないことを訊く弟を睨み、言葉少なく、違う…と呟く。


「明日から輝が韓国入りするから今日は早く別れたの」


朝一番の便で出発するの、と教えると、うへぇー、と嫌そうな声を上げる。


「俺、そういう仕事ヤだな」


国内だけに支社がある企業に勤めてて良かった…と安心する郁は、都市ガスのメンテナンスをする会社に勤めている。


「輝は期待されてるのよ」


あんたとは違うの、と言いながらブーツを脱ぐと、郁は、そりゃそうだ、と首を縦に振り。


「確かに姉ちゃんの彼氏はエリートだもんな」


北芝電気の外部交渉役なんて誰もが出来る仕事じゃないと褒め称え、それを卒なくこなしてるのが更に凄いと言い切った。


「でも、この最近、結構ほっとかれてない?」


ギクリとする様な質問を投げ掛けられ、少し狼狽えつつも「いいのよ、別に」と強がる。


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