年下御曹司の、甘い提案が聞きたくて。
木曜日の午後にようやく帰国してきた輝は、オフィスへ着くと直ぐに臨時の会議への出席を求められた。


私は彼と一課の課長とが、相手との交渉を上手くやり終えて帰国したと噂を聞き、まあ良かった…と安堵する傍ら、その出張も実は輝の父親が絡んでいるかもしれないとは言えずに、一人パソコン業務を行っていた。


「……ねぇ、彼氏、凄いじゃない?」


流石ね、と声をかけてくる今井さんに目を向け、そうですね…と言いながらも声は沈んでしまう。
このところの私はずっとこんな調子で、誰かと話をするのも億劫で、少し面倒くさそうな気配を漂わせていた。


「何よぉ。やっぱり何か悩んでいるんじゃないの?」


話してごらん、と親切に言ってくれる今井さんにはお礼を言い、でも、やっぱり言えないと思い顔を俯ける。


「小島ちゃん?」


今井さんは私の只ならぬ雰囲気を察したみたいに顔を覗き込み、もしも彼氏のことで悩みがあるのなら、相手に何もかも正直に話した方がいいよ…とアドバイスしてくる。


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