年下御曹司の、甘い提案が聞きたくて。
そもそも輝の父親からは身を引けというようなことを言われている。
もしも家すらも売却することが知れてしまったら、これ幸いとばかりに、別れをもっと切り出されるんじゃないのか。


そうなれば、私は本当に一人きりで頑張らないといけなくなる。
誰も自分を満たしてくれなくなって、一人で孤独に暮らさないといけなくなる__。


(こんな急にいろいろと決断を迫られても……)


頭がついて行かない。
どうしたらいいかも分からない。


掌で顔を包んだまま息を吐く。
大切にしていたものが全て無くなっていくような気がして、嫌だ…と強い拒否を感じた。



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