3秒後、きみと恋がはじまる。



と、急に前から歩いて来た男の人がぶつかって来て、わ、とよろける。痛い…。


「いってーな。よそ見してんなよ」


なんだか不機嫌なおじさんに怒鳴られてしまったけれど、ぶつかって来たのはそっちでしょ!

キッと睨めば、「おい、謝れよ」なんて逆上されてしまう。
だから満員電車は嫌いなんだ…!


相当機嫌が悪かったのか、怒鳴るのをやめないおじさんに、怖くなって、悔しくて、じわりと目に涙が浮かぶ。



今日、ついてなさすぎる。

茜くんには会えないし。


数学のワークはなかなか終わらないし。
…いや、まあそれは自分のせいだけれど。


1人で帰ることになっちゃうし。

こんなおじさんに絡まれるし。

心を黒いモヤモヤが覆って、目の奥がツンと熱くなった、とき。




「…そっちが先にぶつかっただろ」



私の後ろから低い声が聞こえて、驚いて振り返ったら、そこには。


会いたくて会いたくて仕方なかった、茜くんがいた。


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