3秒後、きみと恋がはじまる。
「茜くんは何買いに来たの?」
「これ」
もう会計を終えたらしいレジ袋の中には、クリームパン。
意外と甘いもの好きなんだ。なんか可愛い。
「甘いの食べるんだね」
「人並みにね」
要くんは気を使ってくれたのか、少し遠くの棚のお菓子を見ている。
ここだ、勇気出せ、桃!
自分で自分に喝を入れて、あの!と口を開いた。
「れ、連絡先教えてください!」
勢いをつけすぎて、思わず敬語になってしまった。
……正直、教えてもらえる気はしてない。
茜くんに連絡先を聞く女の子はたくさんいるけれど、みんな教えてもらってないし。
私が特進科で同じクラスだったら、クラスのグループチャットから勝手に追加できるのになぁ。
「全然読まないけどいい?」
「え、いいの!?」
「返事もしないけどね」
それはもはや連絡先を交換している意味がないような気もするけれど、教えてもらえるだけ進歩だ。
「全然いいです!」
「じゃあ、はい」
茜くんがスマホの画面に自分のメッセージアプリのQRコードを表示して、私がカメラでそれを読み取る。