3秒後、きみと恋がはじまる。
黒のスマホに、透明のケース。
綺麗な画面に、初期設定のままの緑のメッセージアプリの背景。
それがなんだか茜くんらしくて、少し頬が緩んだ。
「ありがとう!
…なんでもないことでも、送ってもいい?
返事はいらないから…!」
「ダメって言っても送ってくるんだろ」
「うん!」
少し意地悪な笑み。右の口角を少しだけ上げて、私を見下ろすその顔が好き。
ダメって、言わないところが優しい。
そうやって意地悪言うのがオッケーのサインだって、私ちょっと分かっちゃったよ。
「ていうかそれ、買わなくていいの。
食べる時間なくなるんじゃない」
私の手元にあるチョコレートとお昼ご飯を指差す茜くんに、はっとする。
確かにレジは混んでいるから早く並ばないと、買って、教室に戻って、ご飯を食べはじめる前に休み時間が終わってしまう。
「あっ、じゃあえっと…ありがとう!またね!」
レジに並んで、教室に戻ろうとしている茜くんに手を振ったら、鬱陶しそうな顔をされた。
その顔も、好き。
それでもまだ手を振っている私を見て、呆れたように笑うその顔も、好き。
茜くん、好き。