ドッペルゲンガー
黒沢隼人の話
全ての始まりは、友達の一言だった。

夏休みが明けた高校。夏休みの思い出を放課後集まって話しているクラスメートの横で、俺は一人かばんに先生に配られたプリントなどを入れ、帰る準備をしていた。

俺、黒沢隼人(くろさわはやと)はクラスで影のような存在だ。いてもいなくても一緒。クラスでもどこのグループにも属さず、透明人間のように生きている。

夏休みも友達とどこかへ行くわけでもなく、家でゴロゴロしたりファミレスでバイトをしたりして過ごした。青春なんて言葉が似合わない生活だ。

きっと卒業するまでこんな生活なんだろう。そう思っていた…。

「隼人」

帰り支度を済ませ、教室を出ようとした俺を、友達の田中圭太(たなかけいた)と東陸(あずまりく)が呼び止めた。

「何だよ」

呼び止められ、俺は少し不機嫌な顔を見せる。家に帰って録画しておいた新作のアニメを見ようと思っていたからだ。

「なあ、お前ってさ夏休みの最終日に俺のバイト先に来た?」
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