【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜


「あ……はい……」



忘れていたわけではない。

でも……まだ答えを出していなかったから。


佐倉先輩のことは好き。人として、尊敬するところばかりだ。

けど、この気持ちは恋愛感情ではないし、やっぱり考えれば考えるほど、好きでもない人と付き合うなんて違うんじゃないかと思ってしまう。

ふ、ふりだということはわかっているし、佐倉先輩が私を好きじゃないことなんて重々承知してる。

それに、佐倉先輩にはたくさんお世話になっているから、私にできることがあれば協力したいけど……



「あの、もう少しだけ、待っていただけると……」



どうしてもすぐに答えを出せなくて、そう告げた。

本当に、優柔不断な自分が嫌になる。


それなのに、佐倉先輩は嫌な顔ひとつせず微笑みかけてくれた。



「もちろん。急かすみたいなこと言ったけど、ゆっくりでいいから」

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