【完】無自覚な誘惑。〜俺だけを見てよ、センパイ〜




自分の状況を理解したのとほぼ同時くらいに、扉が開く音が聞こえた。


佐倉先輩が私から退き、開いた扉の方を見る。

私も思考がぼんやりとしている中で、同じ方向に視線を向けた。


……え?

扉の先にあったのは、呆然とこちらを見ている和泉くんの姿。



「……すみません」



もしかして、今の、見られてっ……。

すぐに背を向けて去っていこうとする和泉くんに、私は言い訳の言葉も出なかった。



「……待って和泉」



佐倉先輩が、和泉くんを呼び止める。

ぴたりと足を止めた和泉くんの背中に、先輩は問いかけた。



「俺と静香ちゃん、付き合おうと思ってるんだけど……和泉はどう思う?」



佐倉先輩、何言って……。



「なんで俺に聞くんですか?別に……いいんじゃないですか」



……っ。

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