嘘の続きは
就職してからもたまに記者に声をかけられることがあった。
それに、会社でも私と真紀が姉妹と知った人たちからいろいろ言われることも多かった。

サインが欲しい
写真が欲しい
会わせて欲しい
撮影現場が見たい
本人じゃなくて共演者に会いたいなんてのもある。

もう慣れっこだ。
もう子供じゃないし、あの男に頼る必要はない。

目を閉じて浮かぶのはあの日あの男とキスをしていた若い女の真っ赤なルージュの唇。
私と目が合い、エクステだらけの睫毛の奥で勝ち誇ったような色をさせた女の瞳。
恋心は捨てたのに何年たっても思い出すと吐き気と寒気がする。

大丈夫。もう何もかも自分で対応できるほど経験は積んでいる。

ーーーでも、真紀の名前に惹かれて寄ってくる人間関係にもうんざりして私はさらに笑顔の仮面をかぶるようになった。

周りの人たちの心が読めず信用できない中で『女優の妹』の私が社内で友人を作るのは難しく表面上の付き合いだけしてやり過ごす。

特に会社の受付嬢をしていると内外関係なく興味本位で声をかけられた。

恋愛などもっての外で、知り合う男の口から真紀の名前が出るだけでもう信用できなくなっていた。

まあ、恋愛なんかしなくても生活はできるし。
友人も学生時代からの気心の知れた仲間がいるし。
ーーー新しい関係など別にいらない。

そう思った。

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