嘘の続きは
「発表まであと何回くらい影武者は必要になるの?」

私の問いかけに真紀はさあ?と首をかしげて視線を部屋の奥にいるあの男に向けた。

「おそらくあと2回。記者会見の前日が最後になるはずだ」

男は壁にもたれたまま私に淡々とした声で返事をした。この男との接触もやっと終わりになる。
もちろん向こうもそう思っているだろう。

いつものように壁にもたれる男の顔を久しぶりに真っ直ぐ見つめた。

昔見ていたようなよれたスーツ姿じゃないし、疲れた顔もしていない。
高級感が漂うスーツに綺麗にセットされた短めの髪。
当時かけていなかった銀縁の眼鏡は今の冷たい雰囲気に合っている。

エレベーターで近付いた時に香った香水も昔はつけていなかったものだ。
大手芸能プロの専務さんになったのはもう私の知らない無関係な男。

「最後までやり遂げますから」

私はもう自分の当たり前になった笑顔の仮面を張り付けて男に向けて微笑んだ。




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