嘘の続きは
「お姉さま、あなたの妹もいつまでも子どもじゃいられないんだよ。もう26才になるんだけど?同級生は数人母親になってるし。私だってもう立派な大人なんです」

口を尖らせると今度は爆弾が落とされた。

「友達が母親になったってね、朋花は子どもを産むどころか彼氏もいないじゃないの」

思わず顔をしかめた。

あの男の前で彼氏がいないと言われたくなかった。
私が干物女であることに間違いはないけど、それを知られるのは非常に悔しい。

「---ウイッグ外してこのまま帰ろうかな」

じろりと真紀を睨むと
「うっそ。うそうそ。朋花ちゃん、ご機嫌直して。今度、朋花の好きなmoderianaのチーズスフレご馳走するから」

・・・moderianaのチーズスフレか。

失恋した日に真紀の控室にあったもの。
あれから一度も食べていない、私の過去の好物で今は一番嫌いなモノ。

私の胸がずきりと痛んだ。

「チーズスフレはいらない。もう好きじゃないの」

あの日のあれを思い出してしまうからチーズケーキの類は一切口にしていない。

「どうして?あれ大好物だったじゃない」

「うん、なんか飽きたっていうか。食べ過ぎたみたい。ケーキなら他のがいいな」

「そう?わかった。マカロンの詰め合わせを・・」

「それも私が食べられないやつじゃん」

今度はマカロン嫌いの私にわざとだ。

「姉、妹に対する扱いがひどい」

「ふふ、嘘よ。美味しいバウムクーヘンを買ってあげるから」

真紀が母親のような穏やかな顔をしてふふふっと笑った。

ああ、その顔を見て安心した。姉は本当に幸せをつかんだらしい。
私も少しは役に立ったってことかな。

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