嘘の続きは


そうして最後の帰路に就いた。

深夜のマンションの廊下を靴音を鳴らして二人で歩く。




ーーーいつもならあの男が玄関の中にまで入ってくることはないのに。

ここでいいといっているのに何故か今夜は早く玄関の鍵を開けるようにととせかしてくる。

私はというと、乗せられた車の中からずっとこのオトコにまとわりついていた昔のことを思い出していてどうにも感傷的になってしまっていた。

ああもうこれで本当に関わるのは最後だなんて切なくなっていたのだからおめでたい。

このオトコは一刻も早く私と離れたがっているようで早く鍵を開けて中に入れとせかしているのだから。


本当は心の奥底にまだこのオトコへの感情が闇のように沈殿している。

いつもはグッと抑え込んでいるのに、宿主の意思など無視して今夜はそれが何度か浮かび出ようともがいているのだ。

早く鍵を開けて中に入れ
部屋に入るのを見届けるまでが自分の仕事だからと言い切ったこのオトコの言葉にムッとする。
この仕事をさっさと終わらせてくれという態度に私の心が凍り付きピシッとひびが入った。

真紀はいつだって大事にしてもらっている。
真紀ばっかりずるい。

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