湖都子のポエム10
忘れられない人……
すぐには忘れられなくても
そのうち思い出さなくなる
だから今まで通りに普通に……
なのに頭から離れなくて困る

キミが……
キミの声が……
キミとの思い出が……

いつかは……とは思っても
そんなの遠い未来にしか思えなくて……
このまま時間が止まった世界にいるみたいで……
オレ1人が世界に取り残されたんじゃないかって思えて……
心が冷えていく

オレの一度きりの人生の途中なんだ……
この広い世界でたった1人……
キミに会いたい……
こんな風に心が冷えることも……
切ない気持ちも……
知りたくなかった
______________________________________________
葵の兄……薫……

薫の本心は、奈々のことが好きだった。奈々と葵が両思いだと感じていた。だから、手が届くとは思えなくても、奈々のことを遠くから見守っていた。

だけど、このままで、奈々のことを大事にできるかな?離れた方がいいんじゃないかって思って、高校は寮のあるところを選んだ。

なんで兄弟で同じ子を好きになっちゃったんたろうな……葵じゃなかったら、諦めたりはしなかった。たとえ想いが通じなくても、たとえ近くにいられなくても、たとえもう会えなくても、もう一生会えなくても、奈々がどこかで幸せでいてくれるなら……と思って離れた。

だけど、実際に離れたら、奈々に会えなくて……心が冷えていく自分に気づいただけだった。

寮生活にも慣れてきた高校2年目の夏休み、家に帰ると……母親から奈々が葵じゃない男と付き合い始めたと聞いた。俺は何のために奈々から離れたんだ?

奈々が高校に行ってから会えなくなったと、母親がしょげていた。奈々に会えたらと、お土産を買ってきていたので、一緒に渡しに行こうと言うと、ウキウキと支度を始めた。

お土産を持って、二人で行くと、奈々と奈々の母親が笑顔で迎えてくれた。久しぶりの奈々の笑顔を見て……わがままだってわかってるけど、奈々を一人占めしたいと思った。もう諦めない。もう他の男に渡さないから……想いがあふれて……これからはもっと家に帰ろうと決心した。
< 18 / 19 >

この作品をシェア

pagetop