秘密の出産が発覚したら、クールな御曹司に赤ちゃんごと愛されています
「樹里、起きたの?」
「うん、なおくんに起こされた」

 もっと寝たかったのにーと頬を膨らませている樹里なのに、直樹には全く響いていないみたいで抱き寄せて笑っている。

「美味しそうだなー。早く食べよう」

 楽しそうに食事をしたあと、朝の支度をして、三人で家を出る。直樹の車で樹里を保育園に送り出したあとは、もう一度戻ってきて車を置く。

 そして私が出勤をしてカウンターに入るころ、直樹が出勤のために前を通る。そして彼に向かって「いってらっしゃいませ」と頭を下げて見送るのが最近のパターンだ。

 直樹と一緒に住んでから、毎日平穏で幸せだ。生活のひとつひとつが特別に感じられる。一人の時間になると「あぁ、幸せだな」と噛み締めて、早く家族に会いたくなる。

 深夜勤務だったスタッフから引き継ぎをしたあと、いつもの業務に入る。今日は特別大きなイベントはないので、受付として立っていることが多くなりそうだ。

 けどこういう日に限ってトラブルが起きたりするので、油断は禁物。

 午後三時ごろまで静かな時間が流れていたけれど、予感的中。住人からのコールが鳴り、私は急いで受話器を上げた。
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