秘密の出産が発覚したら、クールな御曹司に赤ちゃんごと愛されています

数日後に顔を合わせたときに、「私は結婚して子どもがいます」と伝えた。入居者さまと個人的に連絡を取ることは禁止されているし、規約違反になるので困るとストレートに伝えたのだけど……

 彼の行動が止まることはなく、頻繁に会いに来るようになってしまった。


♢♢♢♢♢

「ねぇ、松岡さん。この前のあの男、誰なの?」
「え……?」

 先日、天野さんに話しかけられて困っていたところを直樹が助けてくれた。あのときは天野さんに食事に行こうと誘われていたので、助け船を出してくれてとても助かった。

「あの方は、入居者さまです」
「本当にそれだけ? なんか……仲良さげな気がしたんだけど」
「そんなことはありません」
「ふぅん……」

 あまり納得していないような返事をして、私の顔をじっと見つめてくる。
前までこんなふうに人の顔など見なかったのに、天野さんは人が変わったようだ。

「明らかに嫉妬していたよね、アイツ」
「え……?」
「ううん、何でもない。じゃあね」

 ひらひらと手を振って、天野さんは外へと出ていった。
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