マリッジリング〜絶対に、渡さない〜


それは初めてのようで、だけどどこか知っているような気もする感覚で。

このザワザワする感じは何なんだろう。
胸の中に落ち、蠢く黒いもの。


「実を言うと、俺も嬉しかったんだ」
「えっ?何がですか!?」
「リュウ君、サッカー好きなんだよね?」


目を合わせたまま話を弾ませる、大地とリュウ君ママの会話に、何故か鼓動が加速していく。

…わかった。
この感覚が、何なのか。


「あぁ!最近、興味あるみたいで。でも、私はルールもろくに知らないから教えてあげられなくて」
「リュウ君、結構上手だったよ?さっき庭でリフティング教えてたんだけどさ」
「そうなんですか!?」


忘れていた、感覚。

楽しげに話をする二人を見ながら、やっぱりそうなの?と、自問自答する。

私…嫉妬してる?

だとしたら、何年ぶりかもわからない。
結婚してからは、初めてのことだった。
こんな気持ちになるなんて、どうかしている。

私たちは結婚して十年も経つんだ。
嫉妬なんて、バカバカしい。

「あ、そうだ景子!五話と六話見たよ!」

パチンと手を叩き、頭を切り替えるように景子に声をかけた私は、二人の会話が気になりつつもビール片手に流行りの韓国ドラマの話に花を咲かせたのだった。

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