マリッジリング〜絶対に、渡さない〜

「はぁっ…」

一人きりになった途端、大きくこぼれたため息。
心臓がドクンと脈打ち、胸につまる重苦しさをもう一度ハァッと吐き出す。

「…何で私、イライラしてるんだろ」

ボソボソと独り言をこぼしながら残りの食器を洗い、片付けを進めていく。
そして全てが終わると冷蔵庫から冷えた水を取り出し一息ついた。

「はぁっ…」

今日は少し、飲み過ぎてしまったのかもしれない。
年甲斐もなく感じたバカみたいな嫉妬心。
それを隠すように、笑って、お酒を煽って。
だから今も、酔っているわけではないし断じて良い気分ではない。

出てくるのはため息ばかりだし、いい加減気が滅入ってくる。

でも私、どうしてこんなにモヤモヤしてるんだろう。
リビングのソファーにどさっと腰を下ろすと、今夜のことを思い出しながらそっと目を閉じた。

大地、楽しそうだったな…。
サッカーの話で盛り上がったり、リュウ君を膝の上に乗せてたり。
リュウ君ママともあっという間に打ち解けてた。

パパたちはほんの数分で「リリちゃん」なんて呼んじゃってたし、景子たちも最初は様子見な感じだったけれど、化粧品の話をきっかけに随分と盛り上がっていた。

楽しそうだった…"私"以外のみんなは。

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