隣人はクールな同期でした。
部署も違うし
それにもし何か知っていたとしても
この人は気を使って教えてくれない。
そんな気がする。

…疑うのは良くないか。

入院してるとマイナス思考ばっかで
ダメだな。


しばらく2人で話してる間
時折、彼のスマホのバイブが振動しているのがわかった。

そしてそれは彼自身も気付いていて
チラチラ画面を見ながらも無視している。


「電話…ですよね。
 出なくていいんですか?」

「あ、あぁ…大丈夫」


そう言って何度も切っているけれど
急用な用件なんだろうなのはわかる。


「何か…あったんじゃないですか?」

「え…」

「仕事…気になるんでしょ?」


そう訊ねると彼は小さく頷き
少し言いづらそうに
『新作が始まったり新しい企画があったりで忙しくて…』と告げた。

陽向さんのいる編集部が忙しいって事は
ウチの部署も忙しくなる。

そこにアタシはいないけど…。


「会社に…戻ってください」

「え、でも…」

「陽向さんが忙しそうだと
 こっちまで落ち着かないです。
 アタシも少し休みたいので
 戻ってください」


そう言うしかなかった。
< 458 / 487 >

この作品をシェア

pagetop