時には優しく…微笑みを
七海の家にいた私を迎えに来ると、課長からの電話があってから数十分後、慌てた様子の課長が七海の家に着いた。

「齋藤、悪かったな。ありがとう」

「菅野課長、さっき電話で話した事忘れてないですよね?お願いしますよ?」

課長に、にっこり笑いながら話をした七海が私の方を振り向いた。

「ほら、迎えに来てくれたんだから、素直になんなさいよ。分かった?」

私の耳元で、こそっと呟いた七海に、分かった朋香小さく返事を返した私。

「櫻井、行くぞ」

「あ、はい。じゃあ、また会社でね、七海」

「うん。気つけて帰ってね。おやすみ」

おやすみと言葉を返して、私は課長の後を追いかけた。
課長は何も言わず、助手席のドアを開けてくれた。

私は、ありがとうございます、と小さく答え、車に乗り込もうとした。

「えっ…」

背を向けた私に後ろから、課長に抱きしめられていた。

「か、課長…」

「櫻井…あ、すまん。悪い…」

私が言葉を発した事で、悪いと思ったのか、課長は私を解放してくれた。

「じ、じゃあ、車を出すぞ…」

「あ、はい…」

課長が、どうしてそんな事をしたのか…
聞きたいけれど、なんて聞いていいのか、私は分からなかった。
ただ、七海に言われたように、自分の気持ちに正直になりたい、その気持ちを大事にしたいと、私は課長に思いを伝えようと胸に決めていた。
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