時には優しく…微笑みを
「そう言えば、似たような事言われたかも…」

「そうでしょ。朋香ちゃんと同じ傷を持ってるのよ。しかも6年前に、それが人を信じる事が出来なくなって、女なんていらない、ってそこまで言ってた彼が、説明会に来てた一人の女の人に興味を持った、って事が大きな出来事だったのよ。私も諒太もまさか一目惚れするなんて思ってもみなかったけどね。あの執着はそれしかないでしょ」

結子さんから聞かされる話が、大きすぎて私はついていくのが、精一杯だった。

だって、指導係になった時も…厳しさは、私には半端なかったし…

「指導係してたでしょ?あれも志願したのよ?菅野君」

「え?えぇ!嘘でしょ」

驚いた私は大きな口を開いたまま、呆然となっていた。

「ふふ、本当よ。誰にもつかせたくなくて、自分がやるって言ったらしいわ。厳しいのも、他の人間が手出し出来ないようにしたらしいから、完全ストーカーよね。私も諒太もやめなさいって、何度言ったか…」

「…や、やだ、課長、そんな…」

「やっと、笑ったわね。それだけ、菅野君から愛されてるのに、それを否定するの?迷惑だって思うの?」

「あれ、なんでだろ、涙が…ふふ、おかしい」

私は、泣きながら笑っていた。
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