時には優しく…微笑みを
「これ以上は…ダメだな。風邪移してしまうよ」

名残り惜しそうに、拓海さんは唇を離した。

「拓海さん…このまま寝て下さい」

拓海さんは、抱き寄せた私の肩に顔を埋め、離れたくないと呟いた。

「このままいたら、風邪移すのは分かってるけど…離れたくない…ワガママだな俺」

「ふふっ、拓海さん…子供みたい…」

駄々をこねる子供のように、甘えてくる拓海さんが愛おしく思えた。

「拓海さん、寝るまで一緒にいますよ。だから寝て下さい」

「いいの?」

肩から顔を上げた拓海さんは、笑顔だった。
そして、ベッドに入った私を、拓海さんが身体を抱き寄せた。

「私が今度熱出したら、看病して下さいね?」

「え?するする!ちゃんとするよ!」

ふふ、また笑いが漏れた。
こんな拓海さんを社の営業部のみんなが見たら、なんて思うだろう。

こんな一面を持っていたなんて、そしてその一面を私が見る事が出来るなんて…

まだ少し熱があるのか、拓海さんの体温を感じながら、私は眠りについてしまった。
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