時には優しく…微笑みを
夜中に目が覚めた私は、拓海さんにしっかりと抱きしめられたままだった。

身動きが取れない。
寝付くまで、と言いながら私が先に寝ていたなんて…

私は、そっとその腕から抜け出そうと、出来た隙間から身体を動かした。

「どこ行くの…離さないよ」

え?と顔を上げると、拓海さんが私を閉じ込めた。

「このまま…」

それだけ言うとまた寝入ってしまった。

これは完全に風邪移ったかも…
そう思いながら、私はまた眠りについた。



翌朝、ひたすら謝る拓海さんがそこにいた。

「ほんと、ごめん!ごめんなさい!」

私の前で手を合わせて、頭を下げる拓海さんを見て笑いがこみ上げてきた。

「ふふふ、拓海さん。もうその辺でいいですよ。私も寝ちゃったんだから、嫌だったら力づくで出てましたよ。私も拓海さんの腕の中にいたかったんですかり」

「ほんとに?怒ってない?」

可愛い…
これが、あの菅野課長なのか、と思えるほどに。
私は、手を合わせてるその手を握ると、怒ってないですよ。と言いながら、拓海さんにキスをした。

突然の私の行動に驚いた、拓海さんは、

「な、朝からそ、そんな事をしたら…」

「これじゃどっちが、上か分かりませんね」


よかった。
熱も下がったみたい。
これで大丈夫…すべて大丈夫。

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