時には優しく…微笑みを
私は、拓海さんが出してきたその手を掴んだ。
すると、そのまま腕を引っ張られた。

「櫻井君、結婚が決まったって聞いたよ。やっと菅野が決まった人が出来て一安心だよ。おめでとう」

高岡部長からお祝いの言葉をもらい、私は慌てて頭を下げた。

「あ、ありがとうございます」

「ま、まだ日取りとかは決まってないそうだが、またちゃんと決まったら教えてくれ。じゃ…」

「あ、すみません。高岡部長、またちゃんとした日取り等、ご報告に行かせていたどきます」

拓海さんが話をしながら、高岡部長に頭を下げていた。

それを、固まったままの女子社員が見ていた。

「君達もいいかな?仕事は仕事だから、何も変わらないが何かあるなら私に言ってくれ。分かったね?」

「は、はいっ」

拓海さんの言葉にみんなが、ハッとなり揃うように返事をしていた。


掴んだ手を離し、腰に手を当てると拓海さんは、行くぞと前に足を進めた。

少し歩いてから、拓海さんが小声で、これが朝言ってた事か?と聞いてきた。

「だから言ったじゃないですか。拓海さんは自覚なさすぎですよ?」

「朋香に言われたくないけど?」

「もぅ!」

小声で言い返すと、拓海さんは笑いを堪えていた。

私達が離れて少ししてから、後ろの方で、叫び声が聞こえたのは言うまでもない。

「えー!なんでー!」
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