【最愛婚シリーズ】極上CEOにいきなり求婚されました

「森安さん、これってこの間の人ですよね？」

ロッカールームに入るなり、わたしに一冊の雑誌を見せてきたのは店頭で受付をしている女子社員だ。

「ん？」

何のことだろうと誌面をのぞき込み、わたしは息をのんだ。

そこには少しはにかんだような笑顔を浮かべているケイトがいた。

「すごい人と知り合いなんですね。二十六歳でこんなに有名になるなんてよっぽど才能がある人なんですね」

「そう……だね」

わたしは彼女の言葉に適当に返しながら、食い入るようにして雑誌を見ていた。

北村圭人（きたむらけいと）二十六歳。十代のころ親の仕事の都合でニューヨークへ。

大学を飛び級で卒業後、当時の同級生と会社を設立。二年前にその会社を五十億で売却後、ベンチャー企業へ投資を行う会社を経営している。……と書いてある。

これが本当にわたしの知っている、ケイトなの？

思わず雑誌の中で微笑んでいる彼に指を這わせる。

誌面からはあたりまえだけれど、なんの温度も感じられず、余計に他人のような感じがする。

けれどそこに映っているのは、紛れもなくケイト本人だ。

もしかした双子の兄弟……なんて馬鹿なことを考えてしまうほどわたしは混乱をきたしていた。

ひとつの一文を目にして、わたしの息が止まる。