【最愛婚シリーズ】極上CEOにいきなり求婚されました
【結婚の予定は今のところありません。あのシステム自体に僕自身が馴染まないというか】

きっとこれが彼の本音だろう。

わたしに「俺と結婚すればいい」と言ったのは、ただの戯れにすぎない。

そう言えば、わたしが思い通りにでもなると思ったのだろうか。

「それ……よかったら、差し上げましょうか？」

「え、あ、そうね。もらってもいい？」

あまりにもわたしが誌面を熱心に読んでいるのを見て、譲ってくれると言ってくれた。

「どうぞ。じゃあお疲れ様です」

「ありがとう。お疲れ様」

彼女がロッカーを出て行くと、わたしは雑誌を手にして奥にある自分のロッカーへ向かった。

ゆっくりと扉を開き、扉の裏にある鏡に映る自分の顔を見た。

ずいぶん、ひどい顔をしている。

仕事終わりで疲れた顔をしている。でもそれだけじゃない。

さっきの雑誌でケイトの正体を知ってしまったことにショックを受けているのだ。

これまでに感じてきた違和感がすべて綺麗になった。

時間に余裕があるのは彼自身が仕事のスタイルを決められる立場だから、そしてあの高級ホテルに滞在できるほどの資産を持っているから。

洋服だって勤め人でなければ、よっぽど公の場に出るようなことが無ければあのラフなスタイルで問題にないに違いない。

違和感がなくなっていく一方で、彼に対する不信感が大きくなっていく。
< 89 / 129 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop