総長さんが甘やかしてくる③



「なんで木良と幻か喧嘩してるの。幻が高校辞めたことと関係してる?」


俺が高校を辞めたのは、そこに求めるものがなに一つなかったからだ。


たった一つの希望も曇ってしまった。


稔とは、もう、会っていない。

会うこともないだろう。


あいつには、せめてこれまで通りの

俺と関わりのなかった頃の生活に戻って欲しかったが。


【一生、車椅子】


「……何も言えることはない」

「つらそうな顔、してる。ものすごく」

「心配には及ばない」

「わかんない。もう、わけがわかんないけどさ」


鼻をすする、霞。

頬を伝う涙を拭ってやりたい気持ちを、ぐっとこらえた。


「幻は、ここにいて」

「俺が関わりたくないと言ってもか?」


これ以上、霞に期待して欲しくなかった。


「あたしが出ていくから。近寄らないようにするから」

「お前の隠れ家なんだろ」

「いいの。あたしは卒業したら今の家を出て大学の近くで暮らす。だから幻、いくらでもここにいていいよ。お父さん幻のこと気に入ってるしさ。バイクいじったりするのに便利でしょ? 職場の人のとこなんて。気を使うじゃん」

「…………」

「お父さんの晩酌の相手とかしてあげてよ」

「ああ。わかった」

「あたしね、幻。幻のこと……」


そのとき、霞が

俺に告白しようとしてきたのに気づいて霞から視線を外した。


俺は

あいつの気持ちさえ、聞いてやらなかった。


「ねえ。今晩だけ。一緒に眠ってもいいかな」
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