総長さんが甘やかしてくる③



俺から離れた霞が、落ち着きを少し戻したのを見て、伝えた。


「木良が羅刹に所属しているらしい」

「は……?」

「聞いたことないか」

「羅刹……って。かつては悪名高きチームだったけど。突如として、その影もなくなった………って。伝説の?」


やはり霞には、その程度の認識しかないのだなと思った。


俺が滅ぼしてしまったも同然で。

そこに木良がなんらかの思惑を持ち加入したなんて考えてもいなかった。


「よく、わらないけど。ヤバめのチームだよね?……潰れたか、潰れかけの。えっ。なんで、木良が……」

「実質、総長不在。元いたメンバーは、ほぼ下っ端しか残っていない。木良を含む、黒梦を抜けた連中の多くが羅刹に移った。どうやら滅びかけたチームを立て直す気でいるんじゃかいかと睨んでいる」

「嘘」

「本当だ。木良は。かてての仲間たちは。俺の、敵になったんだ」


あいつらは今

俺が、この世で一番憎んでいるチームに所属している。


おそらくその中に

稔の夢を――未来を、奪った者がいる。


「なに、それ。なんでそうなるの」

「ひょっとしたら俺をつぶすためなのかもしれない」

「冗談だよね?」

「頼むから。霞は、この争いに関わるな」
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