総長さんが甘やかしてくる③


よくわかんないんだけど。

すごく悔しいんだけど。


今、すごく、たのしい。


「ほら。笑わせてやったついでに、幻の居場所教えろや」

「生意気な男って。だいきらーい」


この時間が終わらなければいいのに。


「……オシエテクダサイ」


かわいいやつ。

でも。


あたしにかまうのは、幻のためで。


シュウが守りたいのは

黒梦と、それから、黒梦の姫。


「ひょっとして、仲間。下で待たせてるとか?」

「ああ」


あたしとシュウは、あくまで、ただここで出会っただけのひと。

もうこんな風に話すことはない。


「ふーん」

「いちゃわりいかよ」

「……そこに。黒梦の姫もいる?」

「ああ」


ズルいよ、夕烏ちゃん。

幻からもシュウからも可愛がられて。


幻のこと自分のものにしたなら。


…………このひとは、あたしにちょうだい。


「シュウは。あたしから情報聞いたら姫の元に戻るんだ?」

「そうなるな」


――行かないで


「ウソ、教えるかもしれないよ」


戻ら、ないで。


「君は嘘をつけない」

「え?」

「君だって、幻を救いたいはずだ」

「……なに、言ってるの」

「あいつを助けてやりたい気持ちは。君も同じはずだ」

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