総長さんが甘やかしてくる③
木良が、ライターをポケットへとしまう。
「帰るよ。かすみ」
「は?」
「霧切も」
木良の怒りはおさまったのか?
いや。そうじゃない。
木良の復讐は、続くだろう。
今日のところは切り上げるというだけで。
「木良」
――――幻が、口を開いた。
「あの場所。覚えているか」
「……どの場所かな」
「待っている」
「行かないよ」
「来るまで、待つ」
「そんな約束。僕が守ると思う?」
「ああ」
こんなことがあっても
幻は、木良を信じるというのか?
「悪い、夕烏。先に帰ってろ。愁と燐と一緒に」
そう言って立ち去る幻は
一度も夕烏の目を見ることはなかった。