総長さんが甘やかしてくる③


家族として。

兄として。


ミノルは、そんな弟想いの兄をも裏切ったというのか。


ドーピングって言ったな。

そこまでして記録が欲しかったのか?


甘い汁を吸うことを覚えた人間は

こんなにも腐ってしまうのか?


「どうやらサトルは。幻のせいでミノルが怪我したと思いこんでいるみたいだね」


と、燐。


だから殴ったのか。

サトルさんは、幻のことを。


「思いこんで……いる?」


サトルさんが、燐を見る。


「おおかた幻を守る側の人間がサトルに報復した。それに感づいた幻は、『俺のせいです』とでも言って謝ったんじゃない? 悪いのは誰かな。少なくともボクは、幻は、なーんにも悪くないと思うね。だって被害者だから」

「そうだ。幻は、悪くない。なにもかも自分一人で背負いすぎなんだ」


燐と木良の意見が合致する。


「報復ってなんだよ。弟が、いったいなにしたって……」

「ちゃんと教えてあげなきゃね。君の弟は、救いようないクズだってこと」
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