総長さんが甘やかしてくる③
バケツを運んでくると置き、花火を配り始める。
そこに
サトルさん、スミレさん、ミノルの姿はない。
「二人きりのデート。邪魔されちゃったね、幻」
と、木良。
「騒がしい連中で。すまない」
「ひとつお願いしてもいい?」
「言ってみろ」
「霧切も、連れてきていいかな」
「好きにしろ」
「じゃあ。好きにする」
――羅刹が、片付いた。
「ボク、ドドンと放てるのがいいな〜♡」
「わかりました。燐さんは、打ち上げ花火ですね」
「やめろユウ。燐に危険物を渡すな。線香花火でも与えとけ」
「えー、なにそれ。儚くて美しいボクには線香花火がピッタリっていう口説き文句?」
「歪んだ解釈すんなボケ」
「ちょっと。愁は、あたしと花火するんだから。ガキは帰って寝てれば?」
「あれー。キミ、部外者なのに。いつまでここにいるつもり? あつかましいねえ」
どいつもこいつも
さっきまで死刑場のような空間にいたのがまるで夢だったかのように、遊んでやがる。
「カスミちゃん」
木良が立ち上がり、霞に近づく。
「ああ、木良。……幻との話、終わったの?」
「忠犬と。いつの間にそんなに仲良くなったの」
「は? 別に。仲良くはないし」
「妬いちゃうなあ」