総長さんが甘やかしてくる③


そのとき


バイクのエンジン音が

複数、こちらに近づいてきたと思ったら


「木良ー!」

「……かすみ。帰れって言ったのに」


賑やかな連中が、次々とやってきた。


「幻と花火するなら、あたしも呼んでよ」

「しないし」

「え? でも」


霞が持ってきたのは、

木良が用意したらしい花火だった。


「……霧切」


木良が、霧切を睨む。


「どうしてもやるって聞かなくて」

「ったく。マイペースなんだから、かすみは」

「それ。木良に一番言われたくないよね」

「ていうか。なんでかすみ、忠犬のウシロ乗ってきてるわけ」

「それはボクが聞きたいよー? どうしてボクの席に羅刹の姫が乗って。ボクはコワ〜いグサランの運転する車なのさ? 泣いちゃうよ」


燐のやつ。

今夜のところは、カスミに席を譲ってやったのか。


「霞の頼みを愁が聞いたとはな」

「聞いてよ、幻。男に二言はないとかなんとか言ってさー。意味わかんないよね? 急になに仲良くなってんのって感じ。人のダーリンとらないでくれる?」

「誰がダーリンじゃ」


メットを外した愁が苦笑いしている。

霞と燐に、板挟みにあっているらしい。


「みなさーん。たくさんありますから。好きなの持ってくださいね」


――――夕烏
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