総長さんが甘やかしてくる③


――――解散後


「なにげに初めてだよね。幻のウシロ」

「そうだな」

「僕、あんまり走りに出てなかったし。乗っても林さんのウシロだったから」


ひと気のない川沿いを、バイクで駆け抜ける。


「姫様と帰らなくてよかったの?」

「言ったろ。今夜はお前と過ごすと」

「……かすみが。忠犬にお熱みたいなんだけど」

「馬が合うんだろう。お互い根は真面目だからな」

「えー、幻。あっちの味方してる?」

「こうなったからには。どっちでもねえな」

「話が違うよね。僕にかすみを守れって言ったなのに」

「もたもたして横取りされても知らない、とも言ったはずだ」

「そうだった。まあ、シュウくんと僕なら経験値に差がありすぎるから負ける気はしないけど……。かすみが、幻の次に気に入るのが純情バカとは。さすがに予想外」

「俺としては。霞を二人が甘やかしてやってくれるとありがてーが。そうなると黙ってないのがいるな」

「……あのチビだね」

「燐とも仲良くしてやってくれ」

「あの銀髪。使い方次第では、すごい兵士になるよね。それこそ殺戮天使みたいな。どこで拾ったんだい?」

「あれでも落ち着いてきた」

「ふーん」
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