総長さんが甘やかしてくる③

「いらっしゃい」


入ったのは、朝まで営業しているラーメン屋。


「塩と、とんこつ」


そういって木良がカウンターにかけ、俺も隣に座る。


「ユウちゃんって言ったよね。マスクしてて、よくわかんないけど。かわいーね?」

「……そうだな」

「デレた幻を。これから拝めるわけだ」


霞には、気づかれたが。

木良はまだ夕烏が失踪少女だとは気づいていないらしい。


「ユウ……って。ユウカちゃんとか。ユウキちゃんとか?」


 ラーメン屋の店主は少し離れた場所で作業していて、俺たちの話には耳を傾けてはいない。

 それでも声のボリュームを落とし、木良にだけ伝わるように囁いた。


「夕暮れのユウに、カラスで“夕烏”だ」
< 266 / 272 >

この作品をシェア

pagetop