わたしの愛した知らないあなた 〜You don’t know me,but I know you〜

一花はいくつかの私物をいつものようにデスクの引き出しに入れて座った。朝からため息が出そうになるのを我慢する。

「よう、おはよう」

後ろから声をかけられる。

「おはようございます、鬼塚さん」

振り返ると、あいかわらず背の高い彼が後ろに立っていた。

「土産」

鬼塚が一花に差し出したのは長い棒のついたキャンディーだった。昨日の午後、海外出張から帰ってきて、今日から出社なのだ。

「ありがとうございます、本当に買ってきてくれたんですね」

「おはようございます、一花先輩。いいなあ、お土産」

ちょうどとなりのデスクに後輩の篠山が出社して来て言った。

「篠山も欲しいか?まだあるからやろうか?」

そう言って鬼塚は彼女にも一本差し出す。

「え、ありがとうございます!」

「いくつ買って来たんです?」

「適当だよ、そんなもん」

話してる横で、篠山が甲高い声をあげた。

「え!何ですかこれ!」

「?なに?」

「一花さん、よく見て、これ!私ダメ、こういうの!」

一花は手にしていたキャンディーを見る。中心部に何かある。え……、これって。

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