【短編】君の魔法にかけられて
期待が壱成の頭に浮かんだ刹那、
新年へのカウントダウンが始まった。
『明日やろうは馬鹿野郎』
さっき聞いた女子高生の声が一世の脳内で響く。
明日やろうの結果何ヶ月も会えなくて
タイミングを見逃してしまった。
今なのかもしれない。
そう思ったとき、
とっさに思っていた言葉が口をついて出てしまった。
余りのことに佐藤の顔も見ることが出来ない。
居心地の悪い沈黙が訪れ後悔をしかけたその時、
「鈴木さん!ちょっと来てもらってもいいですか?」
その沈黙を破ったのは最近入った見習いの奴だった。
壱成は佐藤の反応を待たずに
行かなければならなかった。
「太鼓隊の奴1人熱出たみたいで…代わりの人呼んだんですけど、30分ほど遅れるらしいです、どうします?」
「なら代わりが来るまで俺がやります」
あんなこと今、佐藤に言うんじゃなかった。
自らが奏でる新年を祝う楽しげな太鼓のリズムも
壱成には聞こえなかった。