二人の距離の縮め方~弁護士は家政婦に恋をする~
上機嫌な遥を、初江のいるサンルームに案内すると、顔をしかめて主が出迎えた。
「遥ってば……今日来るなんて聞いていないわ」
「可愛い孫がいつ遊びに来たっていいでしょ?」
「私に会い来たのではないでしょう? 全部聞こえていたわよ。……芽衣ちゃん、ごめんなさいね」
「いえ……あの、初江さんは学さんのお祖母様なのですか?」
初江が申し訳なさそうに頷く。
「私が全部勝手にした事なのよ。芽衣ちゃんみたいな子が、学の所にきてくれたらって思って。普通に紹介したかったんだけど、あの子そういうのは苦手だから。一年前、学が広めの部屋に引越したから、家政婦さんを雇うように、強引に勧めたの」
以前から疑問に思っていた謎が解けた。そもそも学はどう考えても家政婦なんて必要としていない。部屋はいつも綺麗だし、身の回りの事は自分でできる。
なぜ週一回とはいえ、家政婦を雇っているのか、何度か本人に直接聞こうとしたが、芽衣の存在を「いらない」と言われてしまうのが怖くて、あまり考えないようにしていた。
「じゃあ、水族館と、ディナーのチケットも?」
今思えば、不自然なくらいタイミングがいい。ディナーのチケットは結局使う機会を逃してしまったが。
「水族館はただの私のお節介よ……学からは何も聞いてなかったの。その後のレストランのディナーは、私からって言ったら受け取るかもしれないから、って学に頼まれたの」
「ついでに言うと、芽衣ちゃんを独り占めしたくて、おばあちゃんを旅行という名目で追い払ったんだけどね……それに、ちゃっかりホテルまで予約しちゃって!! 下心丸出しで、男って嫌よね? 代わりに私が堪能しておいたわ」
遥がしれっと言う。
「遥、お願いだから黙っててちょうだ……め、芽衣ちゃん?」
初江が驚いたような顔で見つめている。芽衣は、自分の目から大粒の涙が溢れ出ている事に気付いた。
どうにも堰き止められず、ついには、しゃくりあげながら泣き出した芽衣を、遥がそっと近寄り、肩を叩いて軽く抱き寄せ、初江が優しく手を握ってくれる。
「……私、馬鹿でした。何も分かってなくて」
誰の力も借りず、一人で生きているつもりだった。でも、それは優しく見守ってくれている人の存在を否定していたにすぎなかった。
初江と学は、相場より高い給料を芽衣に払ってくれている。自分の努力が評価された気でいたが、本当は、芽衣の事情を知っていたからこその援助にすぎなかったのだ。
「遥ってば……今日来るなんて聞いていないわ」
「可愛い孫がいつ遊びに来たっていいでしょ?」
「私に会い来たのではないでしょう? 全部聞こえていたわよ。……芽衣ちゃん、ごめんなさいね」
「いえ……あの、初江さんは学さんのお祖母様なのですか?」
初江が申し訳なさそうに頷く。
「私が全部勝手にした事なのよ。芽衣ちゃんみたいな子が、学の所にきてくれたらって思って。普通に紹介したかったんだけど、あの子そういうのは苦手だから。一年前、学が広めの部屋に引越したから、家政婦さんを雇うように、強引に勧めたの」
以前から疑問に思っていた謎が解けた。そもそも学はどう考えても家政婦なんて必要としていない。部屋はいつも綺麗だし、身の回りの事は自分でできる。
なぜ週一回とはいえ、家政婦を雇っているのか、何度か本人に直接聞こうとしたが、芽衣の存在を「いらない」と言われてしまうのが怖くて、あまり考えないようにしていた。
「じゃあ、水族館と、ディナーのチケットも?」
今思えば、不自然なくらいタイミングがいい。ディナーのチケットは結局使う機会を逃してしまったが。
「水族館はただの私のお節介よ……学からは何も聞いてなかったの。その後のレストランのディナーは、私からって言ったら受け取るかもしれないから、って学に頼まれたの」
「ついでに言うと、芽衣ちゃんを独り占めしたくて、おばあちゃんを旅行という名目で追い払ったんだけどね……それに、ちゃっかりホテルまで予約しちゃって!! 下心丸出しで、男って嫌よね? 代わりに私が堪能しておいたわ」
遥がしれっと言う。
「遥、お願いだから黙っててちょうだ……め、芽衣ちゃん?」
初江が驚いたような顔で見つめている。芽衣は、自分の目から大粒の涙が溢れ出ている事に気付いた。
どうにも堰き止められず、ついには、しゃくりあげながら泣き出した芽衣を、遥がそっと近寄り、肩を叩いて軽く抱き寄せ、初江が優しく手を握ってくれる。
「……私、馬鹿でした。何も分かってなくて」
誰の力も借りず、一人で生きているつもりだった。でも、それは優しく見守ってくれている人の存在を否定していたにすぎなかった。
初江と学は、相場より高い給料を芽衣に払ってくれている。自分の努力が評価された気でいたが、本当は、芽衣の事情を知っていたからこその援助にすぎなかったのだ。