最愛宣言~クールな社長はウブな秘書を愛しすぎている~

 私と東吾の関係を知っていたであろう秘書課や開発の面々は、東吾の婚約の話が広まったあとも、特に何事もなかったかのように振る舞ってくれた。私たちの間でどんなやり取りが行われたのかは火を見るより明らかだし、それを面白がるような人間は幸いにしていなかった。少なからず、私に同情してくれている人もいるようだけど、相手が社長ということもあって、みんな口を噤んだんだろう。

 ただ二人。

 真木は一言、大丈夫か、と聞いてくれた。以前のように私を飲みに誘っていいものか迷っているようだったので、こっちから声をかけたら、それからはちょくちょくあっちからも誘ってくる。

 そして茉奈ちゃんは、帰りの更衣室で、私を見るなり抱きついてきた。

「里香さーん……」

 茉奈ちゃんのほうが今にも泣きだしそうな顔をしていて、私は反対に落ち着いてしまった。

「シンデレラドリーム、やっぱり実証できなかったわ。ごめん」

 私がへらっと笑うと、茉奈ちゃんはくしゃっと顔を歪める。

「なんで笑ってるんですかあ。もう、畜生、社長の人でなし!」

 人でなし、という単語が出てくるあたり、茉奈ちゃんだなあと思う。

 結局その後一緒に飲みに行って、私の代わりに散々東吾と雅さんを罵倒してくれた。それから大号泣して、ぐだぐだになるまで酔い潰れて私の部屋に泊まっていった。その寝顔を眺めながら、いい後輩に恵まれたなあ、とほろりと泣いてしまった。

 この会社に入って、いいことももちろん悪いこともあったけど、私の周りの人たちはみんな温かった。そんな人たちに囲まれて、やりがいのある仕事ができて、私は本当に幸せ者だなあと思う。

 それでも。きちんとけじめをつけなければ、私はきっと東吾を思い続ける。
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